【医師監修】妊娠前から葉酸サプリを摂取する本当の理由

葉酸を摂る理由を指さすめぐ先生

妊娠前から「葉酸」を摂り入れよう、といった内容の記事をネットやマタニティ雑誌でよく目にします。なぜ妊娠前から葉酸を摂取したほうがいいのでしょうか?

葉酸っていったい何?葉酸が妊娠とどう関係しているの?今回は、妊娠前から葉酸を摂取する理由や葉酸の疑問についてお話していきます。

1.なぜ妊娠前から葉酸を摂ったほうがいいの?
2.葉酸とは?体内での「葉酸」の働きについて
3.葉酸の期待できる効果や効能
4.葉酸が不足するとどうなる?
5.妊娠前に必要な葉酸の摂取量
6.【食材の葉酸とサプリの葉酸】実は吸収率が違う
7.【妊娠前の葉酸サプリ】メリット・デメリット
8.まとめ

なぜ妊娠前から葉酸を摂ったほうがいいの?

葉酸の効果と不足時のリスク

葉酸は妊娠してから必要なものと誤解されがちですが、厚生労働省は妊娠前から摂ることを推奨しています。妊娠4週目から12週目の初期段階は、胎児の細胞分裂が活発な時期です。この妊娠初期に葉酸が不足していると、胎児が先天性の疾患にかかる恐れがあります。

中でも、「二分脊椎症(にぶんせきついしょう)」といった神経管閉鎖障害のリスクが高まると考えられています。

胎児の神経管の下部に閉鎖障害が起こる「二分脊椎症」は、脊髄が脊椎の外に出てしまい神経障害が発生するものです。神経管の上部に起こると「無脳症」となり、脳が形成不全となって流産や死産のリスクを高めます。

妊娠前後に葉酸が十分に足りていれば、神経管閉鎖障害の発症リスクが大幅に低くなることが欧米での研究で分かりました。その結果を受けて、厚生労働省は妊活中から妊娠3カ月までの間、葉酸を摂るように通達を出しています

妊娠前から葉酸を摂る理由は、まだまだあります。葉酸は子宮内膜を厚くする作用があるため、受精卵が着床しやすく定着する効果が期待できます。他にも重度の言語発達遅延リスクがほぼ半減することが報告されています。

逆に妊娠前後に葉酸を含むビタミンの摂取量が低いと、自閉症を発症するリスクが高まることも一部の研究者が示唆しました。そして、ネット上では葉酸がダウン症を予防するという情報もありますが、ダウン症に関しては確証がなく厚生労働省からもきちんとした発表はありません。

葉酸は、妊娠前から摂り入れるとても大切な栄養素の一つであることがわかります。

葉酸とは?体内での「葉酸」の働きについて

葉酸の働き

葉酸は、体内で細胞分裂や核酸の生成を助ける働きをしています。子どもが親に似ていることを遺伝と言いますね。遺伝子の情報が伝わると、身体的特徴が表れてきます。この時に働いているのが、遺伝子物資の「DNA(デオキシリボ核酸)」です。胎児は、細胞分裂によって細胞の数を増やすことで成長しますが、増える細胞にもDNAはコピーされています。

また、DNAとRNA(リボ核酸)を合わせて「核酸」と呼びます。RNAの役割は、DNAの情報を元にたんぱく質を作り出すことです。たんぱく質は、筋肉や臓器、皮膚、髪の毛など、身体をつくる元になる成分になります。葉酸の働きが関係するたんぱく質と核酸は、人が生きていくのに重要な役割を果たしています。

葉酸は、水に溶けやすい水溶性ビタミンB群に属しています。ビタミンB12と一緒に、血液を作る赤血球を合成するときに働く大切な栄養素です。葉酸が不足すると、悪性貧血の「巨赤芽球性貧血」を引き起こす恐れがあります。他にも、葉酸はDNAの合成に関わる成分でもあるので、妊娠時に不足していると先天異常の神経管閉鎖障害が発生するリスクが高くなってしまいます。

そして葉酸は補酵素※でもあり、アミノ酸やたんぱく質の生合成に関わる構成成分です。そのため、細胞分裂を盛んに繰り返す胎児にとっても葉酸は、発育不全のリスクを減らす重要な栄養成分です。2000年には「五訂日本食品標準成分表」にも掲載されるようになり、栄養素としての葉酸が重要とされています。

補酵素:補助的な役割を持つ酵素。主にビタミンB群から作られる。

葉酸の期待できる効果や効能

葉酸で期待できる効果

妊娠が判明する妊娠4週目から5週目に胎児の神経管が形成されるため、この時期に葉酸を摂ることで神経管閉鎖障害のリスクを低減させます。妊活を始めようと思ったら、胎児の発育のためにも葉酸を積極的に摂取しましょう。

そして、葉酸は細胞分裂を助けて子宮内膜を厚く強化してくれるので、受精卵の着床率が高まる効果も期待できます

妊娠中に気をつけたい症状の一つに「妊娠高血圧症候群※」があります。まだ原因が明確にはなっていませんが、血液中のホモシステイン濃度が上昇すると、高血圧症を引き起こすリスクが高まるという報告があります。そこで、葉酸の効能が注目されました。葉酸にはホモシステイン濃度を低下させる効果があるため、「妊娠高血圧症候群」の予防にも期待されています。

妊娠高血圧症候群とは…
2005年4月に「妊娠中毒症」から、病名が変わりました。妊娠32週以降に起きることが多く、ママの腎臓や肝臓の機能障害や胎児の発育不全を引き起こすことがあります。

葉酸は、妊娠を考えている女性だけでなく、成人女性にとって日常的に摂っておきたい大切な栄養素です。DNAの元となる核酸の生成や細胞の再生に作用するので、お肌や髪の毛を美しくするためにも役立ってくれます。赤血球の合成に働きかけて造血を促す役割も持つ葉酸は、貧血の予防にも効果的です。葉酸は、女性の美容と健康の強い味方です。

また、葉酸には、血液中のホモシステイン濃度を下げ、心臓疾患を予防する効果があると考えられています。ホモシステインとは、アミノ酸の一種です。肝臓で代謝する過程で作られるもので、ホモシステインの血中濃度が高くなると、活性酸素が生まれて心筋梗塞や脳梗塞の原因となる、動脈硬化につながる恐れがあります。

葉酸が不足するとどうなる?

葉酸欠乏症の症状

葉酸が不十分な状態を「葉酸欠乏症」といいます。葉酸欠乏症になると、赤血球が大きくなって酸素を運ぶ機能が下がってしまい「巨赤芽球性貧血」を招いてしまうリスクがあります。

ポイントを伝えるめぐ先生

「葉酸欠乏症」はビタミンである葉酸の不足以外に、偏食や過剰なアルコール摂取も原因になるので、バランスの良い食生活が大切です。

悪性の貧血である「巨赤芽球性貧血」には自覚症状が表れます。下痢や体重の減少、うつの症状を感じたら要注意です。貧血が隠れたたまま進行するので、大丈夫だろうと思って放っておくと重度になっている恐れがあります。「葉酸欠乏症」になると、血管内皮細胞に影響を与えて、動脈硬化を引き起こす可能性も高くなってしまいます。

冬に気をつけたいものに「冬型栄養失調」があります。口内炎がよくできたり、抜け毛が増えたり、傷の治りが遅いなどの症状が見られます。身体が冷える冬は、燃焼に必要な酸素を全身に届けるために赤血球がたくさん使われます。そのため、赤血球を助ける葉酸が不足すると、貧血を起こしやすくなってしまいます。葉酸はきちんと必要な量を摂るのが大切です。

妊娠前に必要な葉酸の摂取量

葉酸の必要推奨量妊婦さんは、さらに240μgの摂取を推奨されていて合計で480μgとなります。

そして、厚生労働省では神経管閉鎖障害のリスクを下げるために、妊活中の女性は、推奨量の240μgに加えて、1日400μgの葉酸を摂取するのが望ましいとしています。1日の葉酸推奨量640μgは、妊婦さんの推奨量より多い数字になります。

心配しているめぐ先生

普段の食事でまかないたいところですが、食材に含まれる天然の葉酸は、熱に弱く水に溶けやすいので利用効率が低いのが難点。640μgは、普段の食事だけではなかなか補えない数字です。

そこで、食事で摂ることができる葉酸にプラスして、栄養補助食品であるサプリメントから摂取することを勧めています。平成27年の1人1日当たりの葉酸摂取量平均値は、20代の女性は234μgとなっています。この数字にサプリメントは含まれません。食事のみで摂取できる葉酸量の平均値になります。妊活を考えているならば、食事にプラスしてサプリメントから400μgを補っていきましょう。

【食材の葉酸とサプリの葉酸】実は吸収率が違う

食材とサプリは吸収率が違う

葉酸は「プテロイルグルタミン酸」とも呼ばれる化合物です。グルタミン酸が1つ結合している「プテロイルモノグルタミン酸」は、主にサプリメントに含まれています。食材に含まれる葉酸は、グルタミン酸が複数結合した「プテロイルポリグルタミン酸」に存在しています。

食材に含まれる葉酸(プテロイルポリグルタミン酸)は水や熱に弱いため、調理途中に栄養が損失し吸収率が50%に下がってしまいます。葉酸を多く含んでいる食材は、ほうれん草などの葉野菜やブロッコリー、レバー、豆類などですが、体への吸収率を考えると加熱せずに食べられる、納豆やサラダで摂り入れるといいかもしれません。

サプリメントは食材と違って、およそ85%と体内での利用効率が高いのが特徴です。ただし、手軽に摂取できるサプリメントは、過剰摂取の恐れもあるので注意が必要です。葉酸を大量に摂ってしまうと、ビタミンB12が欠乏している時に診断が難しくなってしまいます。きちんと葉酸の摂取量を守るように気をつけたいです。

【妊娠前の葉酸サプリ】メリット・デメリット

葉酸のメリットデメリット

葉酸のサプリメントを利用する前に、メリットとデメリットを知っておきましょう。メリットは、やはり手軽で簡単に葉酸を摂取できるところです。つわりで食事ができない時でも、効率的に推奨量を摂取できるのはうれしいところ。野菜と違って買いだめができたり、吸収率が高いのも魅力的です。食品から抽出されたサプリメントなら安心です。

デメリットは、粒の大きさによって飲みにくいと感じることがあります。忘れがちになる場合は、メモを貼るなどして習慣づけられます。サプリメントで栄養が摂れていると過信して、食生活が乱れることも気を付けましょう。持病で服用している薬がある場合は、サプリメントを購入する前にかかりつけ医に相談してください。

サプリメントの成分にビタミンAが含まれている場合は、注意が必要です。不溶性のビタミンなので、過剰になったビタミンAは身体の外に排出されずに、蓄積されてしまいます。ビタミンAを1日7,800μg以上摂取してしまうと、胎児に先天性の奇形が発生する危険性が高くなるので、取り過ぎないように気をつけましょう。

まとめ

めぐ先生

妊娠前から葉酸を摂り入れるよう国からも通達が出ていますが、その理由はわかっていただけたかと思います。葉酸はあなた自身のためだけでなく、お腹の赤ちゃんにも大切な栄養素です。妊活を始めよう!と決めた日から、ぜひ摂ってほしい栄養素の葉酸。

葉酸は水に溶けやすい、食材に含まれる葉酸は吸収率が半分程度といった特徴がありました。こういった特徴を知れば、葉酸をもっと上手に摂り入れていくことができます。葉酸は体の中に貯めておくことができないため、毎日摂取していく栄養素になります。

妊活中の葉酸の推奨摂取量は1日640μg。葉酸を多く含む食材を意識して、毎日の食事から摂取することもできますが、葉酸の特徴を考えるとメニュー決めは正直大変かもしれません。そんなときは、国からも推奨されている葉酸サプリメントで補うことも一つの手です。

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